牡羊座の神話金羊毛をめぐり争った話
牡羊座は、黄金の羊毛が空に飾られた様子が星になった話です。
具体的にどんな状況だったのか、ストーリー仕立てでお話します。
継母イノの思い
昔々、テッサリア地方の町にアタマス王がいました。アタマスには妻のネペレがおり、双子であるプリクソス(兄)とヘレ(妹)も生まれました。
しかしアタマス王はネペレと離婚し、後妻にイノを迎え入れました。
双子の兄妹はアタマス王に引き取られて暮らすことになったため、イノが継母になりましたが、イノは兄妹が邪魔でした。
イノ「前妻の子供なんて、面倒見れるかい!」
しかもイノには子供がまだできなかったため、自分の地位を守るためにも、兄弟の存在が邪魔でした。
イノの陰謀
そんなある日、豊穣の神デメテルに感謝を捧げる祭りが行われることになりました。
イノはお祭りが行われる数週間前、国家に災厄が起きているという嘘を、民衆たちに広めました。
噂はあっという間に広がり、人々が不安になり始めたころ、イノは町の広場や寺院で、民衆に向けて演説しました。
イノ 「いま、国家が神々の怒りにさらされています。この災厄の原因は、王の前妻ネペレと、その子供たち、プリクソスとヘレに他なりません!」
イノは、デメテルの怒りを鎮めるには、王の最愛である子供を、神の生け贄に捧げるしかないと訴えました。
イノ 「我々はいま、苦渋の決断をしなければなりません。プリクソスとヘレは、王がもっとも大切にする存在です。もっとも大切な存在を、神聖な生け贄として差し出すことが、神への一番の誠意ではありませんか!?」
イノが国民の心を扇動したことで、世論は生贄を捧げる方向へ動いていきました。
やがて民衆はアタマス王に対し、早く生贄をささげるよう訴えるようになりました。
アタマス王は民衆の大きな渦を退けることができなくなり、兄妹を殺すことに同意してしまったのです。
兄妹の悲劇
兄弟の生贄が決まると、イノは喜んで祭壇のための準備を進めました。
一方で、プリクソスとヘレは無実の罪で犠牲にされることを知り、絶望的な状況に立たされました。
ヘレ 「プリクソス、なぜ私たちがこんな運命になってしまったの?」
プリクソス 「私たちは何も罪を犯していない。しかし、これは神の怒りを鎮める計画だと聞いた。もう逆らうことはできないだろう」
二人は悲しみに包まれ、そのまま祭りの日が訪れました。
プリクソスとヘレは、祭壇に連れていかれました。
アタマス王は兄弟の前に来て言いました。
プリクソスとヘレが無念の思いで祭壇にあがったその時、黄金の羊が突如として現れました。
そして羊は兄妹を背中に乗せて走りだし、会場を去っていったのです。
生贄がさらわれたぞ!
民衆が混乱に陥るなか、黄金の羊はプリクソスとヘレを乗せ、天に舞い上がりました。
兄弟が奇跡的に救われた救われた瞬間でした。
黄金の羊は、アタマス王の前妻ネペレが、神々の王ゼウスに頼んで遣わしたものでした。
コルキスへ向かう
黄金の羊に助けられて空を飛んでいた双子は、遠い国コルキスへ向かっていました。
その途中、ヘレは下に青い波が広がる様子に目を奪われました。
ヘレ 「ああ、なんて美しい海でしょう」
神秘的な魅力に引き込まれていきます。まるで、波立つ海がヘレを誘いかけるかのように魅せられました。
すると気がつくと、ヘレは羊の背中から落ちてしまいました。
プリクソス 「ヘレ!」
ヘレはそのまま、海に吸い込まれていきました。
このヘレが落ちた場所が、ヘレスポントス(現在のダーダネルス海峡)だと言われています。
コルキスに到着する
一人助かった兄のプリクソスは、コルキスまでたどり着きました。
アイエーテース王が迎え入れてくれました。
アイエーテース王 「よくきた、君を歓迎する」
プリクソス「ありがとうございます。受け入れてくださったお礼に、私が乗ってきた羊の金羊毛を送ります」
プリクソスは黄金に輝く羊の羊毛を、アイエーテース王へ贈りました。そして羊そのものは、ゼウスに返しました。
アイエーテース王は金羊毛をとても大事にしたそうです。
金羊毛を狙う者
そのころ、イオルコス都市にイアソンという青年が住んでいました。
イアソンは、異父兄弟であるペリアスに王位を奪われてしまいました。なんとかして王位を取り戻したいイアソンですが、そんなある日、ペリアスがこういいました。
ペリアス 「イアソンよ、コルキスにある金羊毛を持ってこい。それができたら王位を譲ろう」
ペリアスは、どうせイアソンが金羊毛を持ってこれるはずがない、と高をくくっていた発言ですが、イアソンはこれを受け入れることにします。
イアソン「わかった。その言葉を忘れるなよ。私はコルキスへ向かう」
イアソンは仲間たちと共に船に乗り込みました。
イアソンの大いなる冒険の物語が幕を開けました。
イアソンの大冒険が始まる
イアソンはアイエーテース王の元へたどり着きました。そして、金羊毛を譲ってもらえないか頼みました。
しかし、アイエーテース王にとっても金羊毛は大切なものです。
アイエーテース王「イアソン、金羊毛はコルキスの宝だ。渡すことはできない」
イアソン「しかし、王位を取り戻すためには必要なのです」
アイエーテース王「王位か。それでも渡すことはできない」
悩んだ末、アイエーテース王はこう言いました。
アイエーテース王「ならば、火を吹く牡牛を駆って、土地を耕すのだ。さらに、その土地に竜の歯をまくのだ。それができたなら、金羊毛を譲ってやろう」
アイエーテース王は、どうせイアソンがクリアできるはずがないと思っていましたが、イアソンは受け入れました。
イアソン「わかりました。その通りにできましたら、金羊毛をお譲りください」
イアソンは冒険に出かけます。
アルゴナウタイ
イアソン率いる冒険家たちは、アルゴナウタイと呼ばれていました。彼らはアイエーテース王からの課題をクリアしようとします。
まずアポロン神からの助言を受けてアルゴ船を建造しました。アルゴ船は船首にイアソンの恩人である女神アテナが取りつけた金の材料が使われており、これが後に「アルゴ船」と呼ばれるようになりました。
さらに、コルキスの王女メーデイアがイアソンに協力しました。
メーデイアはイアソンに恋をし、彼女の魔法や知恵によって、イアソンはついにアイエーテース王の要望通りの結果を得ることができたのです。
アルゴナウタイの物語は、ギリシャ神話の中で、いくつかの異なる物語やバージョンが存在しており、映画化もされています。映画「アルゴ探検隊の大冒険」があります。
数々の難題がありましたが、イアソンは無事、アイエーテース王の課題をクリアすることができました。
アイエーテース王は、しぶしぶ金羊毛を渡すしかありませんでした。
イアソンの帰国
金羊毛を手に入れたイアソンは、喜びと興奮で胸を躍らせ、アルゴ船に乗ってコルキスを離れました。
イアソン「金羊毛を手に入れたぞ!これで王位を取り戻すことができる。仲間たちよ、祝杯をあげよう!」
アルゴナウタイたちは歓喜に包まれ、アルゴ船は祝福ムードでした。
しかしこのとき、イアソンはメーデイアも一緒に自国へ連れて行こうとしたため、アイエーテース王が追いかけてきました。
しかし、再びメーデイアの助けを受けて、難を逃れました。愛の逃避行です。
イアソンとペリアス
イアソンは自国であるイオルコスに帰ってきました。
そして、金羊毛をペリアスに渡しました。
ペリアス「なんだ、戻ってきたのか。本当に金羊毛を手に入れるとは驚いたな」
イアソン「約束は守ってくれ。金羊毛を渡せば、王位は返してくれる約束だろう?」
ペリアス「お前に王位を譲る気はない。まさかお前が金羊毛の話を真に受けると思わなかったからな。無駄足だったな、はっはっは」
イアソン「貴様ぁあ!」
ペリアスは最初から王位を譲る気はありませんでした。
イアソンはペリアスに裏切られたことを知り、メーデイアと相談します。
イアソン「メーデイア、このままでは私たちは報われない」
メーデイア「ええ、ペリアスには罰を受けさせるべきだわ」
二人は相談しあい、ペリアスを毒殺することに決めました。
毒殺する方法についてはギリシャ神話の中でも異なるバージョンが存在します。ワインに毒を盛ったり、食事に混ぜたり、不老不死の薬だと嘘をついて飲ませたという口承伝承もあります。
いずれにせよ、二人はペリアスを殺してしまったのです。
これが周囲に知れ渡り、二人は国を追放される運命になりました。
二人のその後
イアソンとメーディアのその後は、複数の話が存在します。
その中の一つとして、二人はコリントスへ渡り、メーデイアとともに暮していましたが、イアソンは別の女性に恋をしたためメーデイアを捨てました。
怒ったメーデイアはイアソンを殺してしまい、物語は終わっています。
金羊毛はどうなった?
金羊毛のその後についても、複数のバージョンが存在しています。
一つはイアソンが金羊毛を返すように神託を受け、返しに行くというストーリーです。
そしてもう一つは、イアソンとメーディアがコリントスで新しい生活を築いた後、金羊毛がその地に保管されるというストーリーもあります。
いずれにせよ、金羊毛をめぐって、多くの人々が巻き込まれることになりました。
これを受けて、金羊毛は神々の力によって空にあげられ、星になりました。これが牡羊座として語り継がれています。
神話から見る牡羊座の性格
星座占いでは、牡羊座の人は勇気と思いやりある性格が特徴です。
イアソンの勇気、そして兄弟たちを助ける母の愛、メーディナの愛など、愛と勇気が神話にも描かれているように、牡羊座も愛と勇気がテーマなのかもしれません。
このストーリーをふまえて
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